肖像権とは?基本を理解しよう
近年、生成AIの進化により、個人の顔写真やイメージを活用したコンテンツ制作が簡単にできるようになりました。しかし、そこには重大なリスクが潜んでいます。それが肖像権の侵害です。
肖像権とは、個人が自らの容姿や姿を、他人に無断で撮影・公表されないように保護される権利です。これはプライバシー権の一部とも言われ、本人の意思に反して外部に晒されない自由を保障しています。
具体例:街中やイベント会場などでの写真撮影時に、無関係な一般人が写り込んだままSNSにアップする行為は、肖像権侵害になる可能性があります。特に、被写体が特定できるレベルで写り込んでいる場合は注意が必要です。
公共の場であっても、肖像権は消滅しません。あくまで「個人の尊厳とプライバシーを守る」ための権利であることを、Web制作者やAI活用者は理解しておくべきでしょう。
パブリシティ権とは?肖像権との違い
次に知っておきたいのがパブリシティ権です。これは特に著名人や有名人に関係する権利で、肖像や氏名を「経済的な価値」として利用する権利を指します。
肖像権が「プライバシーを守る権利」なのに対し、パブリシティ権は「経済的利益を守る権利」である点が大きな違いです。つまり、有名人の名前や写真を無断で商品広告に使うと、パブリシティ権の侵害になります。
具体例:プロスポーツ選手の写真を許可なく使った商品パッケージ、俳優の名前を使った偽の推薦広告などがこれに該当します。
万が一パブリシティ権を侵害した場合、多額の損害賠償請求を受けるリスクもあります。生成AIによって著名人風の画像を作った場合も、慎重な対応が必要です。
肖像権侵害の具体的な例
それでは、具体的にどのようなケースが肖像権侵害に当たるのか、見ていきましょう。
- 無許可での写真使用
イベントや観光地などで撮影した写真に映り込んだ人物を、本人の許可なくSNSやホームページに掲載する行為。 - 商業利用への無断使用
個人の顔写真を許可なくポスター、広告バナー、商品紹介ページなどに使用した場合も侵害とみなされる可能性があります。 - プライベートの侵害
日常生活やプライベートな空間(自宅、飲食店内など)での無断撮影・投稿は、重大な肖像権侵害となるリスクが高いです。
生成AIで「一般人風の顔画像」を作成した場合も、実在する人物に酷似していればトラブルにつながる可能性があります。学習データの出所に注意を払う必要があります。
パブリシティ権侵害の具体的な例
続いて、パブリシティ権侵害となる具体例を見ていきます。
- 有名人の無断広告使用
有名人の顔や名前を、本人に無断で広告や販促用コンテンツに使用するケース。生成AIが作成した「有名人そっくり」のビジュアルも含まれる場合があります。 - 商品パッケージへの無断掲載
人気タレントの写真を、契約なしに商品パッケージへ使用する行為も違反に該当します。 - 偽装した推薦広告
実際には関与していない有名人が、あたかも特定商品を推薦しているかのように表示する手法。これは悪質なケースとされ、損害賠償が高額化するリスクもあります。
特に生成AIが生み出す「セレブ風」画像や架空レビューには、パブリシティ権侵害リスクが潜んでいるため、安易な利用は避けましょう。
AI活用と肖像権・パブリシティ権の微妙なライン
AI技術を活用する際、肖像権やパブリシティ権にどのような注意を払えばよいのでしょうか?実際には「どこまでが許されるのか」が非常にグレーな部分も多く存在します。
- 顔の特徴を抽象化・変形すればOKなのか?
- 学習データに有名人の写真が含まれていたら違法になるのか?
- 生成された画像が実在の誰かに「似てしまった」場合はどうなるか?
これらの問題に対する明確な国際基準は、まだ発展途上です。しかし、現時点では、「本人の特定性が認められるか」が重要な判断基準とされています。
つまり、「この人だ」と誰でも特定できる場合は、侵害のリスクが高まると理解しておきましょう。
トラブルを未然に防ぐための対策
AI活用における法的リスクを未然に防ぐためには、以下の対策を意識しておくことが重要です。
- 事前に許可を取る
実在する人物の写真や氏名を使う場合は、必ず本人または所属事務所の許可を得ましょう。生成AIの学習データにも十分な配慮が必要です。 - 権利チェックを徹底する
学習データや使用素材が、パブリックドメインやライセンスフリーであるか確認。あいまいな場合は使用を控えましょう。 - 必要に応じて専門家に相談
少しでもリスクを感じたら、弁護士など法務専門家に相談することが最も確実です。事後対応ではなく、事前対応がリスク回避につながります。
法的トラブルは、いったん起こると解決までに膨大な時間とコストがかかります。AI活用においても、リスクマネジメント意識を持つことが重要です。
まとめ
生成AIは、Web制作やクリエイティブの現場に大きな革新をもたらしています。しかし、肖像権やパブリシティ権を侵害するリスクを軽視してはいけません。
本記事で紹介したように、無断での写真利用や、有名人風コンテンツの作成には注意が必要です。AIが生成したものであっても、法的責任が問われる可能性は十分にあります。
トラブルを未然に防ぐためには、
- 肖像権・パブリシティ権の基礎知識を身につける
- 使用前に素材やデータの権利状況を確認する
- 迷ったら専門家に相談する
といった意識が不可欠です。
AI時代においても、クリエイター・制作者としてのモラルとリテラシーを持って、安心・安全なコンテンツ制作を心がけましょう。
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